マネーが増加しているが「過剰流動性」ではない

執筆者:野口悠紀雄2020年6月25日
リブラ公式HPより

 

 コロナショックで売上げが急減したため、支払いに備えて企業がマネーを確保する動きが強まった。これに応じて政府が緊急融資や給付金などの施策を講じたため、マネーが急増した。しかし、これは過剰流動性とは言えない。株価バブルの原因でもない。

マネーの伸び率が急上昇

 マネーの伸びが急増している。

 この現象はあまり注目されていないが、重要なことだ。

 5月のマネーストック統計によると、通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は、前年比5.11%となった(図表1)。

 M3(M2にゆうちょ銀行など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は、同4.13%となった。

 これらの伸び率は、2004年4月の現行統計開始以降の最高記録だ。

 
図表1 M2、M3の伸び率(対前年同月比、%)資料:日本銀行

資金需要が増えて、貸出が増えた

 マネーが増えたのは、営業自粛などによって売上げが急減し、企業が支払いに備えてマネー(流動性)を確保する動きが強まったからだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。