新・マネーの魔術史:未来篇 (39)

マネーが増加しているが「過剰流動性」ではない

執筆者:野口悠紀雄 2020年6月25日
エリア: アジア
リブラ公式HPより

 

 コロナショックで売上げが急減したため、支払いに備えて企業がマネーを確保する動きが強まった。これに応じて政府が緊急融資や給付金などの施策を講じたため、マネーが急増した。しかし、これは過剰流動性とは言えない。株価バブルの原因でもない。

マネーの伸び率が急上昇

 マネーの伸びが急増している。

 この現象はあまり注目されていないが、重要なことだ。

 5月のマネーストック統計によると、通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は、前年比5.11%となった(図表1)。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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