「バノン逮捕」があぶり出す「トランプ共和党」の亀裂と「右派ポピュリズム」の限界
2020年8月25日
天国から地獄――。映画のような派手な政治劇を地で行く、トランプ政権元首席戦略官スティーブ・バノン(66)の逮捕と起訴である。
彼がいなかったらホワイトハウスの主にはなれなかったと言われるドナルド・トランプ米大統領は、
「彼とはもう長く付き合っていない」
と冷たく突き放した。国境の壁、中国との対決、「ディープ・ステート」潰し、フェイクニュースのレッテル貼りなど、トランプ大統領の多くの戦略・戦術はバノンに負う。選挙戦の逆転を狙って助けを借りたいのが本音かもしれないが、今となっては刑事被告人バノンと距離を置くしかない。
それにしても、希代の戦略家バノンはなぜ逮捕されたのか。
バノンの逮捕はいくつものカラフルなファクターにあふれている。
逮捕容疑は、トランプ大統領の重要公約である対メキシコ「国境の壁」建設資金の詐取だ。
筆者は、2019年3月に来日したバノンを長時間インタビューした(『ポピュリズムと地政学:バノン思想の「今」を探る』2019年3月22日)が、彼は2020年大統領選挙でのトランプ再選のカギは「壁」と力説していた。不法移民をシャットアウトする壁建設は民主党支持者も過半数が支持する政策だから、実現すれば、勝利は固いという説明だった。
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