「コロナ危機」欧州の敗因ドイツの勝因

熊谷徹『パンデミックが露わにした「国のかたち」 欧州コロナ150日間の攻防』

執筆者:中村登志哉2020年10月4日

 新型コロナウイルスの世界的流行は私たちの日常生活を変え、在宅勤務やオンライン授業・会議が当たり前の日常となって久しい。

 世界の総感染者数は約3400万人、死者数は100万人を超え、日本の累計感染者数も約8万人、死者数1500人超(世界保健機関=WHO=による)に達した。2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)、1918~19年に世界で少なくとも死者5000万人(米国疾病予防管理センター=CDC=による)を出したとされるスペイン・インフルエンザなどとしばしば比較されるが、既に相当のインパクトを与えている。

 

 本書『パンデミックが露わにした「国のかたち」 欧州コロナ150日間の攻防』(NHK出版新書)は、この未曽有の危機において、欧州で初めて集団感染がドイツで確認された本年1月以降の半年余について、感染拡大を阻止するために奔走する欧州各国政府や市民の姿を、ドイツ在住の日本人ジャーナリスト熊谷徹氏が、自身の経験や新聞・テレビなどのメディア報道などを基に描き出したものである。

 一時は感染爆発や医療崩壊の最も深刻な事態に陥ったイタリアやスペイン、早期に検査体制の充実を図り、余力のある医療施設を背景に感染拡大の抑え込みに成功したドイツなど、各国が未知のウイルスとどのように闘ってきたのか、現地ならではのエピソードを交えて、最新情勢がまとめられている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。