もっとも重要な成立条件を欠く「デジタル円」

執筆者:野口悠紀雄2020年10月22日
リブラ公式HPより

 

「デジタル円」の実証実験が2021年度に開始される。「一般利用型中央銀行デジタル通貨(CBDC)」では、仲介機関が一般利用者向けにデジタル通貨を発行する。しかし、日本の場合には、何が仲介機関になるのかが、はっきりしない。銀行は含まれるだろうが、Suicaなどの交通系カードやQRコード決済はどうなるのだろうか? 乱立していること、手数料が高いこと、安全性の面で問題があることを考えると難しいと考えられるが、これらを簡単に消滅させられるとも思えない。

日銀がデジタル円の実証実験を2021年度に開始

 日本銀行は、10月9日、デジタル円の実証実験を2021年度に開始すると発表した。

 実証実験では「デジタル円」の発行に向けて、必要条件や基本原則を見極めるという。

 印象的なのは、「日本でCBDCを発行する計画はない」と繰り返し強調していることだ。日銀はデジタル円について慎重な姿勢を崩していない。

 黒田東彦日銀総裁は、12日に国際金融協会(IIF)がオンラインで開催した年次総会に参加してCBDCについて言及。実証実験の開始時期を説明しつつも、現時点で発行する計画はないと強調した。

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