「デジタル人民元」の目的は電子マネーの排除?

執筆者:野口悠紀雄2020年11月12日
リブラ公式HPより

 

 電子マネーのAlipay(支付宝)は10億人以上の人に使われており、それを運用するアントグループの企業価値は、3000億ドルを超える。アントは香港、上海市場での上場を計画しており、市場最大規模の資金調達を行うと見られていた。ところが、規制当局がこれに待ったを掛け、上場は延期となった。当局は民間電子マネーの拡大を抑えようとしているのかもしれない。

信用スコアリングによる与信業務で急成長したアント

 中国で、デジタル人民元の発行計画が進められている。これと、AlipayやWeChat Payなどの電子マネーとの関係がどうなるかについて、これまで2つの対立する見方があった。

 第1は、電子マネー排除説。第2は、共存説だ。

 前回は、共存説の可能性が高いことを述べた。

 ところが、11月3日に、アリババグループ傘下の金融会社であるアントグループの上場が延期されたというニュースが報道された。

 この背後にある事情を考えると、デジタル人民元との関係については、「電子マネー排除説」の方が正しいのかもしれない。

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