四方八方に敵をつくっているエルドアン大統領(C)AFP=時事

 

 ユーラシア情勢の中で、トルコの動きが注目を集めている。昨年の北シリア軍事作戦、リビア内戦への軍事関与強化、今年に入ってはキプロス周辺の天然ガス採掘をめぐる周辺国との対立、ナゴルノ・カラバフ紛争でアゼルバイジャンへの軍事支援である。

 レジェップ・タイイップ・エルドアン政権のこのような対立や介入の背後にある動機や思惑は何か。

 筆者は現在のこのようなトルコの対外政策が、

(1)内政におけるイスラム・民族主義ポピュリズムの外交への投影、

(2)EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)への不信感に突き動かされていると考えているが、これに国内経済悪化から国民の目を逸らさせる思惑も加わっている。

 ただし、トルコの対外政策での前線拡大は、NATOやEUに対する梃子としていたロシアとの利害対立を深めるのに加え、地政学的リスクから国内経済への信頼を弱める結果をもたらしている。

親欧米から「ゼロ・フレンズ」外交へ

 エルドアンを党首とする与党「公正発展党(AKP)」政権の対外政策を振り返ると、2002年の発足当初はイスラム主義ではなく保守民主主義を掲げてEU加盟を目指すとともに、米国のジョージ・W・ブッシュ政権の中東民主化政策を支持していた。

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