明らかになってきた「デジタル人民元」の構造

執筆者:野口悠紀雄2020年11月19日
リブラ公式HPより

 

 10月中旬に、中国で「デジタル人民元」の公開利用実証実験が行われた。

 11月になってからは、Alipayを運営するアントグループの上場中止などの事件もあった。

 こうしたことを通じて、デジタル人民元の仕組みとその意図が、かなり明らかになってきた。

 ただし、本質的な部分で、まだ分からないところも多い。

 これまで報道されていることから推測できることを、以下にまとめてみよう。

現在の中央銀行券が供給される仕組み

 中央銀行デジタル通貨(CBDC)を理解するには、現在の中央銀行券発行の仕組みがどうなっているかを理解する必要がある。日本の場合について言えば、次のようになっている。

 利用者が ATM から日銀券を引き出して、自分の財布に入れるとしよう。これを、商店などでの支払いに使う。

 銀行との関係でいえば、この操作で、利用者の銀行預金がそれだけ減る。つまり、銀行預金が日銀券に変わったのだ。

 銀行にとってみれば、預金という負債が減少し、日銀券という資産が減少する。

 貸借対照表はバランスしているが、構成が変わった。そこで、これを調整するために、日銀に保有している当座預金を取り崩すとしよう。

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