「道」と「地形」で読む「日本創生物語」

柳瀬博一『国道16号線 「日本」を創った道』

執筆者:東えりか2020年12月19日

 日本地図を読めるようになった小学生に「首都圏ってどのあたりか、〇で囲ってくれる?」と尋ねたら、多分「国道16号線」のあたりにしるしをつけてくれるのではないだろうか。東京を囲むように一周している国道、それが16号線だ。

 その首都圏に住んでいても、16号線がどこを通っているのか知らない人が多いのではないだろうか。

 出発点と終点は国交省の決めたところの横浜市西区の高島町交差点。しかし地図をみると神奈川県横須賀市走水(はしりみず)からというのが理解しやすい。

 東京湾に沿って北上し、横浜市を通って東京都町田市に入ったところで大きく左折して八王子に向かう。昭島、福生の横田基地を抜け埼玉県へ。入間あたりでルートは東へ、川越、さいたま市と走ると江戸川をこえ、千葉県野田市に入る。南下しながら千葉市でまた東京湾沿岸を巡り、木更津を抜けて富津市で終点。海の向こうには横須賀が見える。

 ぐるっと一周、実延長326.2キロ。東京の郊外を結ぶ道路、という印象が強い。国道として指定されたのは東京オリンピック前々年の1962年5月1日だから、意外と新しい道なのだが、本書の著者は、この“16号線エリア”は古代から現代に至るまで日本の文明と文化、政治と経済の形を作り上げてきた――と仮定した。

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