11月13日、首相首席特別顧問を辞任し、報道陣に囲まれる英国の「ラスプーチン」ことドミニク・カミングズ (C)AFP=時事

 

 英国の2021年は、混乱と不安の中で幕を開けた。欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)交渉は、年末の12月24日に合意に達したものの、今後どのような影響が出るか不透明なままである。加えて、新型コロナウイルスの変異株が見つかったことで、欧州各国は12月20日から英国との往来を次々と遮断し、FTA交渉の結果が出る前から、英国は孤立を味わうことになった。

 そのような状況に陥る直前、英国の政権内部にも波乱が起きていた。官邸で「内戦」とも呼ばれる権力闘争が勃発し、その結果これまで政権のすべてを差配してきた首相首席特別顧問ドミニク・カミングズが失脚したのだった。

 英国の混迷は深まるばかりである。

騒ぎの発端はストラットンの就任

 カミングズのこれまでの軌跡は、すでに本欄『「英国のラスプーチン」カミングズ「政権の中枢」への道程と目的(上)(下)』(2020年6月19日)などで触れた通りである。

 選挙や投票キャンペーンを仕切って負け知らずの戦略家として、2019年7月のジョンソン政権誕生とともに官邸入りした。12月の総選挙を指揮して与党保守党を大勝利に導き、今年1月には晴れてEU離脱も実現させた。腹心の元大衆紙記者リー・ケインを官邸広報部長に据えてメディアとの関係を仕切るほか、側近や協力者を次々に官邸に呼び込み、閣僚人事を左右し、政権を牛耳って「英国のラスプーチン」「陰の副首相」と呼ばれた。

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