当コラムを2018年の夏に始めたとき、「いつか必ず書こう」と決めた作品がいくつかあった。

 その筆頭格が、藤子不二雄Ⓐの『まんが道』だ。

漫画家のバイブル

あまたの漫画家にとって「バイブル」とも言える作品。藤子不二雄Ⓐ『まんが道』

 私の手元にあるのは2012~13年にかけて刊行された全10巻の「決定版」だ。

 小畑健、ハロルド作石、江口寿史、あらゐけいいち、島本和彦、秋本治、荒木飛呂彦……。帯や文末の寄稿文に並ぶ漫画家の名前を見るだけで、この作品の偉大さが分かる。どの言葉も熱量が高い。

 「いつも書棚の一番取りだしやすいところ」に置いているという江口は、「信仰を持たない僕にとっての、ある種、聖書のようなもの」と綴る。『まんが道』は特別な、多くの漫画家にとってバイブルともいえる作品だ。

 若い読者のために概要を記しておく。

 富山県高岡市の小学校で出会った2人の少年は意気投合し、漫画家コンビ・足塚茂道として「まんが道」に足を踏み入れる。語り手の満賀道雄(まが・みちお)は作者・藤子不二雄Ⓐであり、相棒の才野茂は藤子・F・不二雄だ。足塚茂道はすなわち藤子不二雄である。

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