預金をめぐるマネー戦争

執筆者:野口悠紀雄2021年1月21日
ディエム公式HPより
 

 電子マネーや仮想通貨が広く使われるようになると、銀行預金が減少する可能性がある。すると、銀行の信用創造と貸出のプロセスに大きな影響が生じる。ディエムや中央銀行デジタル通貨の導入に当たって、これが大きな問題となる。

マネーは銀行の信用創造によっても生み出される

 中央銀行が国債を引き受けることによってマネーが創造されると、前回説明した。

 マネーを創造するには、もう1つの方法がある。

 銀行は、増加した預金の一部を用いて貸出を行う。その大部分は預金となって戻ってくる。そこで、さらにその一部を貸出に出す。このような過程によって、元の預金増の数倍の預金増が実現される。

 これは、「信用創造」と呼ばれるプロセスだ。

 預金は、口座振替という形でマネーとして機能する。つまり、銀行がマネーを供給しているわけだ。

 前回説明した国債引き受けによるマネー創造の場合には、マネーの総額は政府の国債発行額と中央銀行の引き受け行動によって決まる。信用創造があると、銀行の貸出行動がマネーの総額に重要な影響を与えることになる。

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