「カラバフはアゼルバイジャン!」と書かれた壁の前に立つイルハム・アリエフ大統領(C)AFP=時事

 

 2020年9月に勃発したアルメニアとアゼルバイジャンの第2次ナゴルノ・カラバフ戦争は、アゼルバイジャンの大勝利に終わった。

 敗北したアルメニア側ではニコル・パシニャン政権の責任を問う声が高まり、しかもパシニャン首相がロシア製ミサイル「イスカンデル」を欠陥兵器呼ばわりしたことによって軍との対立が激化していたという事情は、前回紹介した通りである。

 その後、パシニャン首相は4月中にも辞任する意向を示し、6月に議会選挙を前倒しで実施することによって国民の信を問う方針だが、情勢は流動的だ。

 一方、勝った側のアゼルバイジャンでも、穏やかならぬ動きが起きている。

 今年1月28日、アゼルバイジャン国防省は「ナジマディン・サディコフ大将は現在、軍務に就いていない」と同国のマスコミに対して回答した。心臓手術のためにロシア・モスクワに移送されたというのが国防省の説明だが、額面通りに受け止められない経緯がある。

 実はサディコフ参謀総長は第2次ナゴルノ・カラバフ戦争の最中だった2020年10月に姿を消し、その後、アゼルバイジャン国防省の公式サイトからも彼に関する情報が全て削除されていたのだ。このタイミングで心臓手術というのは、偶然にしては出来過ぎであろう。

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