キューバ・ハバナのアメリカ大使館。いったい何が仕掛けられていたのか―― (C)AFP=時事

 

 その奇病の連続発生は2016年11月、ドナルド・トランプ前米大統領が当選した大統領選挙の直後から始まったようだ。

 キューバの首都ハバナで、米国大使館に駐在する米中央情報局(CIA)の要員や外交官たちが、深刻な神経性の病気を訴え始めた。目眩がして、不眠症に陥り、フラフラになって、記憶喪失も招き、仕事ができなくなる。そんな症状の人が翌2017年8月にかけて少なくとも44人に上った。

 ハバナではカナダ市民14人以上も同様の症状を訴え、その病気は「ハバナ症候群」と呼ばれるようになった。

 同じ症状に陥った米国政府職員はキューバにとどまらなかった。

 2018年春、中国の在広州米総領事館でも、外交官と家族15人以上が同様の症状を訴えた。さらに2017年12月、ロシアの首都モスクワに出張したCIA中堅幹部が同じ病気になったほか、ウズベキスタンの首都タシケントなどでも同様の例が伝えられた。

証明できるか、中露の関与

 だが当時のトランプ政権は、奇病の原因はもとより、何者かによる意図的な仕業か、動機は何か、といった疑問を積極的に追及しなかった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。