ネタニヤフ前首相自身のためだけにモサドを利用したツケは、大きくなるか (C)EPA=時事

 イスラエル右派政党「リクード」のベンヤミン・ネタニヤフ党首がこのほど、首相を退任した。

 ポピュリズム的な手法のネタニヤフ前政権。12年間の長期政権を維持できた一因に、対外秘密情報機関「モサド」による数々の秘密工作を成果として宣伝したことが挙げられている。

 モサドの正式名は「情報特殊工作機関」。そのうち「機関」を意味するヘブライ語からモサドと呼ばれる。要員数は1980年代末、1500~2000人と推定されていたが、前政権下で増強され、現在約7000人と言われる。

 実はモサドは、自由民主主義を旨とする「基本法」の枠外に置かれ、法的制約を全く受けない。国会(クネセト)の監督もない。情報と秘密工作の最前線で国家を守る特別な組織とされているのだ。長官の任命や秘密工作の決定など、権限はすべて首相が握る。

 ネタニヤフ前首相はその上、対イラン秘密工作を政権浮揚に利用したことが、一部の元長官らから批判を受けてきた。

 さらに、激しい秘密工作を繰り返してもイランの核開発を停止させられず、前首相の腐敗がモサドにまで波及していた事実まで明らかになった。モサドは右派から中道左派、アラブ系まで8党からなる新連立政権下でどこに向かうのだろうか。

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