インテリジェンス・ナウ

揺れる世界最強の「モサド」:前首相のポピュリズム支える

執筆者:春名幹男 2021年6月25日
エリア: 中東 北米
ネタニヤフ前首相自身のためだけにモサドを利用したツケは、大きくなるか (C)EPA=時事
国家生き残りのための諜報機関のはずだが、前首相は大幅に増強したそれを自らの政権浮揚に利用し続けた。そして前首相の退任――その存在は逆に国家のリスクになりかねない。

 イスラエル右派政党「リクード」のベンヤミン・ネタニヤフ党首がこのほど、首相を退任した。

 ポピュリズム的な手法のネタニヤフ前政権。12年間の長期政権を維持できた一因に、対外秘密情報機関「モサド」による数々の秘密工作を成果として宣伝したことが挙げられている。

 モサドの正式名は「情報特殊工作機関」。そのうち「機関」を意味するヘブライ語からモサドと呼ばれる。要員数は1980年代末、1500~2000人と推定されていたが、前政権下で増強され、現在約7000人と言われる。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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