焦点はサムスンの「地政学的価値」――安保と経済で揺れる韓国

【特別企画】激動経済:「米中産業冷戦」の時代 (第3回)

執筆者:後藤康浩2021年7月5日
サムスンの半導体主力拠点でセレモニーに臨む文在寅大統領(中央)。21年の韓国の半導体輸出額は史上初めて1000億ドルを突破する見通しだ   ©︎EPA=時事

 米中冷戦は米中双方の陣営構築が急速に進み、冷戦構造がより鮮明になっている。多くの国がいずれに与すべきか、危うく、困難な判断を迫られているが、なかでも最も難しい立場にあるのは韓国だろう。輸出(2019年)の25.1%が中国向けで、米国と欧州連合(EU)向けの合計23.2%を上回るほど対中依存度が高い一方、北の脅威と向き合う安全保障は米国抜きでは成り立たない。

   逆に、米中双方にとっても韓国は産業的に欠くことの出来ない国でもある。サムスン電子、SKハイニックスを中心に圧倒的な競争力、生産能力を持つ半導体産業があるからだ。米国の包囲網によって先端技術から切り離されつつある中国にとって、韓国は半導体の調達、国産化のカギを握り、米国にとってもサムスンの工場誘致は安定供給の面で決定的な意味を持っている

ロジックとメモリー、双方に強さ

 

 半導体生産の国別シェアをめぐっては、大きく異なる2つのグラフが存在する。ひとつは、半導体メーカーの本社所在地の国別のシェアで、〈グラフ1〉である。米国が55%を占め、世界の半導体産業に君臨しているかに見える。

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