アジア諸国で活発に行われている「ファクトチェック」とはどのようなものか。(C)qvist / Shutterstock.com

 ここ数年、アジアにおけるファクトチェック活動は非常に活況を呈している。米デューク大学のレポーターズラボは、2016年以降毎年ファクトチェックに従事している団体の世界的な統計を発表しており、それによると、アジア大陸における団体数は2016年の時点ではわずか23であったが、今月発表された最新の報告では89と、5年間で約4倍近くに 増えている。

 この89という数字には、中央アジアの旧ソビエト連邦諸国や、中東のイランやトルコなども含まれる。報道現場で一般的に使われる「アジア地域」に限定するとその数は減るが、同時に、この統計で使われるファクトチェック団体の定義は国際的な指標である国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の綱領に準じるため、そこから外れる団体も存在する。後述するが、実はアジア地域にはIFCN の定義には当てはまらずとも、ファクトチェックをしていると自認する団体が多数存在する。

 筆者は、西はパキスタンから東はパプアニューギニアまで、北はモンゴルから南はインドネシアまでの範囲を便宜的にアジアとし、昨年10月にこの地域におけるファクトチェック活動の実態調査を実施した。調査の主な結果は、オーストラリアにある新興ジャーナリズム支援団体Judith Neilson Institute(ジュディス・ニールソン・インスティテュート)が今夏の終わり頃に発表予定の年次報告State of News in Asia [アジアにおける報道の現状](仮題)に論考(英文)を寄稿したのでそちらに詳しいが、本稿では、アジア各国におけるファクトチェック活動と政治の関係に注目したい。

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