「愛される中国」を標榜しても、その強国志向は変わらない ⓒEPA =時事
 

 カナダと中国が、互いの人権侵害をめぐって非難の応酬を繰り広げた。民主主義、権威主義両陣営のせめぎ合いの底流に「ソフトパワー」がかかわっていることを象徴的に示す出来事といえる。

 6月22日、スイス・ジュネーブの国連人権理事会の討論の最中、中国の代表が、カナダは「人権蹂躙の国」だといきなり糾弾を始めた。

 カナダの問題とはこうである。

 先住民族に対する強制的な同化政策が行われ、少なくとも数千人が行方不明――。

 6月下旬、カナダ中西部サスカチュワン州の寄宿学校跡地から、墓標のない墓が751基見つかった。レーダーによる地中調査では、少なくとも600体の遺体が埋められ、多くは子どもとみられるという。その前には西部ブリティッシュコロンビア州の別の寄宿学校跡地でも215人の子どもの遺骨が発見され、国内に衝撃が広がっていた。

 カナダでは1990年代まで100年以上にわたり、ローマ・カトリック教会などが運営する約130の寄宿学校で、親から強制的に引き離された先住民族の子ども約15万人が同化教育を受けた。独自の文化や言語が禁じられ、劣悪な待遇の中で虐待が横行し、4000人以上が死亡したとされる。これについてカナダ政府の「真実と和解の委員会」は、2015年に公表した報告書で「文化的ジェノサイド(集団殺害)」と指摘している。

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