いま改めて問われるソフトパワー外交の「共感力」

執筆者:五十嵐文 2021年7月9日
エリア: その他

 

「愛される中国」を標榜しても、その強国志向は変わらない ⓒEPA =時事
ある調査によれば、全世界の「非民主主義」の国・地域は、数で民主主義のそれを上回る。国際機関の議論の場では、権威主義国家の主張が多くの支持を集めることも珍しくはない。それが文化や価値観の押しつけから生まれた対立であるならば、民主主義陣営はアプローチを変える必要がある。
 

 カナダと中国が、互いの人権侵害をめぐって非難の応酬を繰り広げた。民主主義、権威主義両陣営のせめぎ合いの底流に「ソフトパワー」がかかわっていることを象徴的に示す出来事といえる。

 6月22日、スイス・ジュネーブの国連人権理事会の討論の最中、中国の代表が、カナダは「人権蹂躙の国」だといきなり糾弾を始めた。

 カナダの問題とはこうである。

 先住民族に対する強制的な同化政策が行われ、少なくとも数千人が行方不明――。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
五十嵐文(いがらしあや) 1967年東京都生まれ。90年上智大学を卒業し、読売新聞社に入社。政治部、ワシントン特派員、北京特派員、中国総局長(北京)、論説委員を経て、現在は読売新聞国際部長。
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