1966年、パリで演説するキング牧師。 ©AFP=時事

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3. 黒人への暴力の「ドラマ化」——公民権運動の「演出家」としてのキング牧師

 奴隷解放宣言の発布から100年目にあたる1963年8月28日のワシントン大行進は、アメリカの黒人による公民権運動最大のメディア・イヴェントであったが、文字どおり「世界中が現に目撃」したといっても過言ではないこの日のキングの演説「私には夢がある」の冒頭には、大行進の意義を「ドラマ化」という言葉を用いて明確に述べている次のような一節がある。

 

[奴隷解放宣言から]100年経った今、黒人は依然として自由ではありません。100年経った今、黒人の生活は依然として人種隔離の手枷と人種差別の足枷によって悲しくも不自由な状態にあります。[中略]100年経った今、黒人は依然としてアメリカ社会の片隅での暮らしを強いられ、自分の国にいながらまるで亡命者のようになっています。それゆえ私たちは今日ここにこの恥ずべき状況をドラマ化するためにやってきたのです。[1]

 

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