7月中旬の米独首脳会談では、ロシアが天然ガスを「武器」とすることへの対策が課題として積み残された ⓒ AFP=時事

『フィナンシャル・タイムズ』(FT)が2021年7月30日「Natural gas crunch sends prices hurtling higher」と題して、欧州でもガス価格が上昇し、家計にも打撃を与えるようだ、と報じている。

 記事の要点は後述するとして、今回の欧州におけるガス価格高騰の背景には、ロシアがこの春以降「追加供給をしていない(通常応じている契約数量以上のガス供給を行っていない)」という問題もある、という。これはロシアからドイツへの「ノルドストリーム2」(NS2)プロジェクトの有益性を西側に認めさせるべく、ロシアが意図的に行っているのだ、という指摘もあるとしている。

米国LNG製造能力の限界が裁定取引の障害に

 もちろん、天然ガスも「コモデティ」なので、地域間で価格差があればアービトラージ(裁定取引)が働き、価格は収斂される性質を持っている。だが、アジアの需要も旺盛で、欧州向けLNGスポット価格も高騰している。米国産LNGも、これ以上の追加供給ができない情勢だ。

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