岩瀬昇のエネルギー通信 (368)

日本の電源燃料にも影響:ロシアは欧州エネ安保の焦点「ノルドストリーム2」を「武器化」するか

執筆者:岩瀬昇 2021年8月4日
タグ: EU ロシア ドイツ
エリア: ヨーロッパ
7月中旬の米独首脳会談では、ロシアが天然ガスを「武器」とすることへの対策が課題として積み残された ⓒ AFP=時事
欧州ガス価格高騰の背景には、ガスパイプライン計画「ノルドストリーム2」の有益性アピールというロシアの思惑があるだろう。独露をバルト海経由で直接結ぶこのパイプラインは、ドイツのエネルギー確保の有力インフラであると同時に、欧州及びロシアからの欧州向けガス供給ルートの要所・ウクライナにはエネルギー安保上の脅威となる。ロシア・欧州間の「綱引き」の行方は、日本の電源燃料にも大きな影響を与える問題だ。

『フィナンシャル・タイムズ』(FT)が2021年7月30日「Natural gas crunch sends prices hurtling higher」と題して、欧州でもガス価格が上昇し、家計にも打撃を与えるようだ、と報じている。

 記事の要点は後述するとして、今回の欧州におけるガス価格高騰の背景には、ロシアがこの春以降「追加供給をしていない(通常応じている契約数量以上のガス供給を行っていない)」という問題もある、という。これはロシアからドイツへの「ノルドストリーム2」(NS2)プロジェクトの有益性を西側に認めさせるべく、ロシアが意図的に行っているのだ、という指摘もあるとしている。

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執筆者プロフィール
岩瀬昇(いわせのぼる) 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)がある。
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