岩瀬昇のエネルギー通信 (366)

OPECプラスようやく合意も、市場の「不均衡」「不確実」はまだ続く

執筆者:岩瀬昇 2021年7月21日
エリア: 中東 その他
油価水準をめぐるロシアとサウジの利害不一致も潜在リスクだ(ロシアのアレクサンダー・ノヴァク副首相とサウジのアブドラアジーズ・ビン・サルマーン・エネルギー相=2020年12月撮影) ⓒAFP=時事
懸念されていたサウジとUAEの対立は、UAEの主張が認められる形で合意した。両国とも、当座は問題を「経済」のみに止めた方が得策と判断した格好だ。ただし、コロナ禍からの回復スピードには世界各国に不均衡があり、サウジとUAEの対立の火種は消えていない。ロシアの国家予算均衡油価、米シェールの増産など、市場を変動させる不確実性への注視も必要だ。

「OPECプラス」が妥協案に合意した(たとえば『Financial Times』2021年7月18日「Opec+ reaches deal to raise oil production」参照)。

 前回本欄でご紹介したように、7月5日の第18回「OPECおよび非OPEC閣僚会合」(OPEC and Non-OPEC Ministerial Meeting=ONOMM)は合意に達することができず、中止となっていた。翌日にはサウジアラビア(サウジ)が8月販売価格の通知を行い、妥協の余地がない姿勢を打ち出していたため、成り行きが心配されていたものだ(2021年7月4日『OPECプラスでまた衝突「サウジvs.UAE」の火種と減産延長はどうなるか』、および2021年7月11日『米シェール企業「巨額のヘッジ損失」で陥りがちな「誤解」とは』)。

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執筆者プロフィール
岩瀬昇(いわせのぼる) 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)がある。
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