驚きの転身を遂げたコーヘン前長官(C) EPA=時事

 

 30年にわたってモサドの諜報員として働き、その颯爽としたファッションから庁内では「モデル」というあだ名で呼ばれていたヨシ・コーヘンは在任中、ベンヤミン・ネタニヤフ前首相の右腕として外交や政治にも顔を出す存在になっていた。ネタニヤフはコーヘンを自分の後継者のひとりだと言って憚らず、コーヘンは退任後の政界入りも噂されていた。

 しかしイスラエルの規定では、安全保障関連の要職にいた者が政界に進出するには、退職後3年間のクールダウン期間が必要になる。そのため、コーヘンの動向が注目されていた。

 そこへ先日、イスラエルの経済紙「Globes」がコーヘンの再就職先をスクープした。記事は「日本の投資家である孫正義のソフトバンクが、イスラエル事業を率いるトップにコーヘンを任命する予定であることがわかった」と報じている。

「コーヘンは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドのマネージング・パートナーであるヤンニ・ピピリスがロンドンから運営するソフトバンクのヨーロッパ・中東チームと一緒に動くことになる」

 このソフトバンク・ビジョン・ファンドは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子と孫正義が手を組んで発足した投資ファンドである。コーヘンは、在任中に何度もサウジアラビアを訪れており、2020年11月にネタニヤフがプライベートジェットに乗って極秘でサウジを訪問した際も同行している。そのような人脈から、ビジョン・ファンドと仕事をすることが決まったのだろう。

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