「改革」と「改革のフリ」は何が違うか

執筆者:辻野晃一郎2021年8月18日
2020年12月、ポスト「5G」の会合に出席した(左から)NTTドコモの井伊基之社長、KDDIの高橋誠社長、ソフトバンクの宮川潤一副社長、楽天モバイルの山田善久社長。国内市場でユーザーを奪い合っている限り、日本のモバイルキャリアは国際競争で勝負にならない ⓒ時事

 前回は、VUCAと呼ばれる時代のさまざまな変化を生み出している根本要因を5つに整理してみた。これらの要因を震源地とするいくつもの大小のうねりが複雑に重なり合って巨大なうねりとなり、例外なしにありとあらゆることの再定義がどんどん進んでいる。

 そんな中、日本でも企業改革や働き方改革、デジタル改革などが声高に叫ばれてきたが、結局それらが皆掛け声倒れに終わっていたことがコロナ禍によって明らかになった。すなわち「改革のフリ」ばかりでなかなか変われないままでいる間に、世界は再定義が進んですっかり様変わりし日本の衰退が進行した。代表的な事例をいくつか挙げてみよう。

「概念」と「実体(商品・サービス)」を結べない経営トップ

 筆頭は家電産業、特にいわゆる黒物家電(音響や映像など娯楽系の家電)や情報家電といわれる分野だ。この分野は真っ先に再定義の荒波に洗われて産業構造が激変した。この分野では、もともと、テレビ、ホームビデオ、ホームオーディオ、パーソナルオーディオ、ゲーム、デジカメ、パソコン、携帯電話等々のさまざまな製品をカテゴリー分けして大量生産しており、それぞれのカテゴリーごとに担当事業部門が分かれていた。しかし今は、いわばこれらのカテゴリーがすべてスマホの中に納まってしまったとさえいえる。

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