世論調査が示す「アメリカの民主主義」を信じていないアメリカ国民

執筆者:ブルース・ストークス(Bruce Stokes)2021年8月24日
2020年11月、フィラデルフィアの集計会場前で行われたトランプ支持者(左手前)とバイデン支持者(右奥)のデモ ⓒ時事

 アメリカの民主主義が、1850年代の南北戦争前夜以来、最も重大な試練に直面している。これまでも長い間、党派対立というものが政策をめぐる政治運営の足かせとなってきたが、いまや民主主義の基本原則をめぐる国民の分断を生んでいる。例えば、投票とは誰もが持っている「権利」なのか、選ばれし者だけの「特権」なのか? 投票参加は容易にすべきか厳しくすべきか? 選挙結果を最終的に決着させるのは有権者か為政者か?……といった具合だ。この対立の行方によって、来年の中間選挙で議会の多数派をとる党、そして2024年大統領選挙で誰がホワイトハウスの主となるのかが決まる。

 とりわけ日本のような同盟国など世界にとっても、アメリカの民主主義の行く末が与える影響は大きい。“民主的ガバナンスの最高峰”というイメージは、この国のソフトパワーで重要な要素だった。20年前に「ピュー・リサーチ・センター」が行った調査によると、先進国の間で(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本、韓国の7カ国)平均47%がアメリカ式民主主義に好感を示し、40%が否定的だった。ところが、トランプ政権はそうしたイメージを悪化させた。ピュー・リサーチの最新の調査では、上記7か国の平均で56%が「かつてアメリカ式民主主義はよいお手本だったが、近年はそうでもない」と答えたのである。日本でも3分の2がそう回答している。

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