佐賀県武雄市の六角川が氾濫し冠水した住宅地(2021年8月14日撮影:佐賀県提供) ⓒ時事

 毎年のように「数十年に一度」や「観測史上初」と表現される大雨が全国で発生し、大きな被害をもたらしている。記憶に新しいところでは、2015年(平成27年)9月に台風18号が関東・東北地区を通過し、記録的な大雨となって鬼怒川が決壊し多くの家屋が浸水したこの時は「100年に一度の大雨」と伝えられた。

 こうした水害に対して国土交通省は、気候変動による豪雨で、従来の堤防やダムで対応しきれない水害が多発していることから、自治体や企業、住民が協働して河川の流域全体で治水力を高める「流域治水」という政策を打ち出している。

 今年4月に流域治水関連法が成立し、今年11月までに順次施行されている。浸水被害の危険がある地区の開発規制や避難対策が柱で、河川法などの関係する法律9本を一括で改正した。抜本的な対策を講じるもので、河川の氾濫をできるだけ防ぎ、被害を最小限に抑える方策を充実させる。

 こうした施策の背景には、地球温暖化の影響で豪雨被害が相次いでいる現状がある。全国で洪水が発生する頻度が100年間で倍増するとの試算もあり、ダムなどの巨大構造物によるハード偏重の治水には限界があることから、国はソフト対策を含めた「総合力」で被害を減らす方向へかじを切った形だ。

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