自衛隊の1番機がカブールに到着した8月25日、記者会見に臨む菅首相 (C)時事

 大使館やJICA(国際協力機構)勤務のアフガニスタン人関係者の退避にいたらなかった自衛隊のアフガニスタン派遣を、いかに総括し、今後につなげることができるのか。本稿(上)での3つを受け、残りの4つを順に検討していこう。

4・自衛隊法改正で解決するもの、しないもの|現実的な法解釈・運用の議論も欠かせない

 自衛隊の活動に関して、日本では、自衛隊法の条文やその解釈に関する問題に議論が集中する傾向がある。しかし、今回のアフガニスタン退避作戦に限らず、問題は自衛隊法以外にも複合的に存在する。政治の危機意識を高めたり、情報収集、評価の精度を上げること、さらには後述のように、現地職員の扱いを再検討するようなことは、自衛隊法改正ではどうにもならない。広い視野で取り組まなければならないゆえんである。

 そのうえで、それでも、自衛隊法の改正には意味があるし、必要である。それには2つの目的が存在する。

 第1は、プロセスの面から自衛隊派遣の決定の迅速化を促すことである。例えば、「安全な輸送」や「現地政府の同意」といった法的要件の緩和が考えられる。それは、安全でない輸送の強行や現地政府の意向を無視した介入を意味するわけではない。そのため、こうした法改正によっても、実際に行われることが劇的に変わるとは思えない。急に米軍のような活動が可能になるわけでもない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。