米軍のアフガニスタン撤退によって「対テロ戦争」は大きな転機を迎えました。2001年のアフガニスタン戦争、そして03年のイラク戦争へと向かう時流の起点となった9・11同時多発テロから20年。先週金曜の「Foresight World Watcher's 6Tips」でもお伝えした通り、この一つの時代の区切りを捉えて世界のメディアが活発な検証を行なっています。   

   本誌は9月11日当日から、特集[9・11から20年|絶対の「自由と民主」が去った世界で]の掲載を開始しました。池内恵・東京大学教授篠田英朗・東京外国語大学教授お二人の論考が掲載済みですが、星浩(政治ジャーナリスト)、伊藤俊幸(元海将)、滝田洋一(日経新聞編集員)、細谷雄一(慶應義塾大学教授)ほか各氏の執筆も続きます。国際情勢のみならず、それと連動して国内政治、日本の防衛体制や金融・株式市場に生じた変化も捉えて行く予定です。  

   池内氏は、9・11から始まったアメリカによるアフガン介入の20年を、さらに10年以上遡って始まる「冷戦後」という歴史の中に位置付けます。いま私たちの眼前で「終わった」ものとは、「自由主義と民主主義によってなりたつ体制の理念が最終的な普遍理論であり、全世界の隅々において、やがては受容されるという楽観的な信念」であり、「この理念を、軍事行動や占領や外からの政権転覆や国家建設を行なってでも、世界に広めようとする、意志」であると池内氏は指摘します。アメリカによる一極支配を支えた「リベラル・デモクラシーの勝利」という仮説はーーそれはフランシス・フクヤマが『歴史の終わり』で提出した、冷戦後を規定してきた未検証の「仮説」でしたーーまさに、アメリカ自身の手によって否定されたと言えるでしょう。  

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