リベラル・デモクラシー跡地に現れる中東・イスラーム「ポスト冷戦の実相」

執筆者:池内恵 2021年9月11日
タグ: バイデン
エリア: 中東 北米
2021年は「アラブの春」から10年という節目の年でもある。唯一の民主化の成功例とされてきたチュニジアで政情不安が続く   ©︎AFP=時事
米同時多発テロから20年を迎える中で実行されたアメリカのアフガニスタン撤退は、「リベラル・デモクラシーの勝利」というポスト冷戦を規定した「仮説」の終焉を示している。その理念の実験場となってきた中東・イスラーム世界は、アメリカ主導という特殊条件下の三十数年に何を蓄え、どう変容を遂げたのか。これまで靄の向こうに目を凝らすしかなかった実相が、いま一気に立ち現れようとしている。

 今年の9月11日の米同時多発テロ記念日は、さほど注目を集めることもなく去っていくのではないかと、一時は思われた。近年は9・11事件の記憶も薄れつつあり、記念日に取り立てて目を引く報道やイベントがないままで過ぎるようになっていたからである。年を経るにつれて、実行犯の逮捕・起訴・公判といった新事実も出なくなり、犠牲者の追悼や遺族の回顧といった切り口も新味がなくなってくる。いきおい、メディアでの取り上げ方もおざなりに、型通りのものになってきているように見えた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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