恒常化した「文明の衝突」と「アフガニスタンでの敗北」を直視しない日本

2005年9月、ニューヨークでの国連首脳会議で「テロリストは、世界が団結して彼らと戦うことを知らなければならない」と強調し、対テロ戦争への協力を呼び掛けたブッシュ米大統領(当時)(C)EPA=時事
アフリカ、あるいは南アジアからアフリカ大陸に至るインド洋沿いの地域では、米軍アフガニスタン撤退後も多数の「対テロ戦争」が続いて行く。国力の低下を意識するアメリカが防衛ライン再設定を始めた状況下、日本では「アメリカの対中競争への専心」を楽観視する現実離れした認識も少なくないが――。

 アメリカが20年間にわたるアフガニスタンでの駐留を終えた。アメリカのアフガニスタンでの戦闘作戦はこれで終わったのかもしれない。だが対テロ戦争は終わっていない。

 タリバン政権の復活で、アフガニスタンが国際テロ活動の温床になる可能性が残り続けることは、言うまでもない。だが、本質はそこではない。2001年にアフガニスタンから始まった「世界的なテロとの戦い(Global War on Terrorism: GWOT)」としての「対テロ戦争」は、さらにいっそうの地理的な広がりを見せながら、続行中である。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛 社会
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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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