国際論壇レビュー

対テロ戦争で語られるべき「戦後ビジョン」

 九月十一日以後の国際論壇は同時多発テロについての議論ばかりである。十月に入りアメリカを中心とする多国籍軍による軍事的反撃が本格的に始まったからには、さらにこの問題が論壇の話題を独占していくのは確実であろう。『エコノミスト』誌社説がいうように、九月十一日に「世界が変わった」のであってみれば当然である。「九月十一日の驚くべき惨劇は、アメリカに対してのみならず文明世界すべての人々に対する宣戦布告とみなされるべき行為であって、その意図からして、かつてハワイで起きたこと(真珠湾攻撃=評者注)よりも、はるかに残酷で、さらにショッキングであった……今週、アメリカは変えられたし、それと同時に世界も変えられた」のであった(“The day the world changed”『エコノミスト』、九月十五日号)。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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