百貨店が迫られる「ポスト・インバウンド」戦略 地方は大手の「外商DX」でコア顧客を奪われる危機も

執筆者:中井彰人 2025年7月28日
百貨店の売上は好調に見えるが、実はインバウンド売上は減少に転じている[百貨店の免税カウンターに並ぶ訪日外国人旅行者ら](C)時事
大手百貨店4社の2024年度決算は軒並み過去最高益を更新した。しかし、その最大の牽引役だったインバウンド売上はすでに減少に転じている。大手百貨店は外商部門のDX化で需要の深堀りを狙うが、それは地方百貨店にとって、コア顧客である地方在住の富裕層が奪われる過酷な競争環境になる可能性が高い。

 大手百貨店の2024年度決算は、三越伊勢丹、高島屋、J.フロントリテイリング、エイチ・ツー・オーリテイリングの4社とも増収増益を達成し、軒並み過去最高益を更新、絶好調ともいえる結果となった(図表1)。富裕層、インバウンド向けの高額商品の売上増加が貢献しており、特に、訪日外国人客の動線が重なる大都市基幹店における免税売上(インバウンド)が大きく寄与したようだ(図表2)。各社の免税売上実績は5~8割増と大きく伸びて、総額売上拡大の過半を占めており、前期の増収に大きく貢献したことがわかる。訪日外国人数は着実に増え続けているため、このインバウンド需要の拡大は今後も期待出来そうに思うが、今期の百貨店大手各社の免税売上目標はマイナスで設定されている。実は百貨店免税売上は、2025年3月以降、マイナスに転じているのである。すこし様子をみてみよう。

【図表1】各社IR資料より筆者作成 拡大画像表示
【図表2】各社IR資料より筆者作成 拡大画像表示
この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
中井彰人(なかいあきひと) 流通アナリスト。みずほ銀行産業調査部シニアアナリストとして12年間従事。2016年同行を退職後、流通アナリストとして独立。流通・小売関連の執筆活動を始め、新聞や雑誌など多数のメディアへ寄稿する。著書に、『図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)、『小売ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング、共著)がある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top