
2025年1月の日本経済新聞「私の履歴書」は、辣腕経営者の呼び声高い伊藤忠商事の岡藤正広会長の回顧であるが、後半ではファミリーマートとサークルKサンクスの統合話を語った。2010年代前半当時、サークルKサンクスは、総合スーパーのユニーとユニーグループ・ホールディングス(HD)を構成していて、コンビニと総合スーパーがセットになっていた。ファミマを傘下に持っていた伊藤忠は、コンビニは欲しかったが、総合スーパーを経営する気はなかった。紆余曲折はあるのだが、最終的に伊藤忠はユニーグループHDとファミマを経営統合した後に、総合スーパーのユニーを分離することで、目論見通りコンビニに特化した“大ファミマ”を実現して業界2位の座を獲得した。
岡藤氏は大手流通グループの一角であったユニーグループHDを統合して解体するという荒技を成し遂げた。この時、分割のパートナーとして総合スーパーを譲り受けたのが、ドン・キホーテ(今のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス=PPIH、以下ドンキと呼ぶことにする)である。ドンキはユニーを傘下としたことで、小売業界屈指の地位を確固たるものとした。
ユニーを傘下に収めたドンキは店舗網を活性化させつつ成長を続け、2024年6月期には小売業界では5番目となる売上2兆円を達成、時価総額でもファーストリテイリング(ユニクロ、GUなど)、セブン&アイHD、イオンに次ぐ4位となっている。
2000年代の初め、売上1500億円クラスでディスカウントストア大手とはいえトップ10圏外だったドンキは、2024年6月期までに35期連続増収増益(営業利益)を実現している(図表1)。かつて“ヤンキーのたまり場”と揶揄されたこともあったドンキが、この急成長を実現した背景は何だったのであろうか。

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