ヨーカ堂売却は対抗策として有効か――加クシュタール、セブン&アイ買収提案の「本当の狙い」

執筆者:中井彰人 2024年10月7日
セブン&アイは買収提案への対抗と成長戦略の両立が出来るのか、極めて厳しいかじ取りを迫られることになる [記者会見するセブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長=10日](C)時事

 セブン&アイ・ホールディングスが、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT社)から買収提案を受けたというニュースは、正直、驚いた。

 セブン&アイがコンビニ事業の収益に依存していて、百貨店事業(既に売却済みのそごう・西武)、スーパーストア事業などの低採算事業の立て直しが進まないことをアクティビスト株主などのステークホルダーから指摘され、株価にも影響があるという話は聞き及んでいた。ただ、さすがに日本の2大流通グループの1社が、正面から買収提案を受けたという事実はかなりインパクトがあった。

 実際に今後、買収案件としてどのように進んでいくのかは、様々な説が飛び交っているのだが、ACT社はM&Aの歴戦の猛者であると聞くし、資金調達が整えば、敵対的買収に進む可能性も十分にあるのだろう。

低採算事業として槍玉に挙げられてきたヨーカ堂の売却は、これにより企業価値を高めてカナダ社からの買収を防ぐ狙いがあると考えられる。だが、そもそも買収はセブン&アイの何を評価したことによる提案なのか。国内市場が焦点だと考える限り、買収防衛もセブンの奇妙な独り相撲に終わるだろう。
この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
中井彰人(なかいあきひと) 流通アナリスト。みずほ銀行産業調査部シニアアナリストとして12年間従事。2016年同行を退職後、流通アナリストとして独立。流通・小売関連の執筆活動を始め、新聞や雑誌など多数のメディアへ寄稿する。著書に、『図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)、『小売ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング、共著)がある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f