“逆襲”の石破総理、未遂に終わった「三木おろし」と「石破おろし」3つの共通点

執筆者:永田象山 2025年7月30日
タグ: 石破茂 日本
わずかな可能性ではあるが、秋以降も石破政権が存続するシナリオもあり得る[自民党両院議員懇談会で挨拶する石破総理(中央)=2025年7月28日、東京・永田町](C)時事
毎日・読売という全国紙2紙に「退陣へ」と報じられても、総理本人はこれを真っ向から否定。28日の自民党両院議員懇談会でも改めて続投への意欲を示した。党内の「石破おろし」の動きは依然収まっておらず8月末退陣説も囁かれるが、ここへきて別のシナリオを辿る可能性も見えてきた。今の政治情勢は、半世紀前に自民党議員の7割が加担したにもかかわらず失敗に終わった「三木おろし」とよく似ている。

「総理は本気で戦うようだ」

「石破さんは本当に辞める気がないようだね。参ったな」

 両院議員懇談会が開かれた7月28日(月)当日、自民党幹部の一人が口にした。困惑のこもった言葉に、いまの自民党の混迷ぶりが現れているようだ。筆者は“石破の逆襲”が始まったと直感している。

石破茂総理「一切のわたくしごころ(私心)を持たないで、国民のため国の将来のために身を滅してやるんだと、自分を滅してやるんだということなんじゃないでしょうか」

 石破は前日27日(日)夜に放送された「NHKスペシャル」のインタビューで、独特な持って回った言い回しで続投の意向を改めて示した。

 おそらく石破はこのインタビューを通じて、世論だけではなく、麻生太郎自民党最高顧問や岸田文雄前総理、萩生田光一元政調会長、茂木敏充前幹事長といった政敵に対して“宣戦布告”したつもりではないだろうか。

 20日(日)投開票の参院選で衆院に続き与党の過半数割れが確定、自民党内は石破おろしの渦に巻き込まれた。それは現在も続いている。

 23日(水)に石破は麻生・菅義偉・岸田の3人の総理経験者との会談に臨んだが、その直前に一つのハプニングが起こった。毎日新聞・読売新聞の2紙が「石破首相退陣へ」と報じたのだ。読売に至っては号外を配布する騒ぎとなった。

 筆者はこの日、所用があり都内を留守にしていたのだが、毎日の報道に接したときは「飛ばし記事かな」くらいにしか受け止めていなかった。その後、読売が号外を配布したと聞いて「退陣表明か」と固唾を呑んだのだが、結果的に総理経験者3人との会合で石破は自らの進退については何も語らなかった。

石破「私の出処進退については、一切話は出ておりません。一部にそのような報道がございますが、私はそのような発言をしたことは、一度もございません」(会談後の会見)
官邸関係者「これは完全に政局だ。総理はどうやら本気で戦うようだ」

 つまり、石破を早く引きずり下ろしたい勢力がメディアに情報を流す格好で退陣を既成事実化させようとしている。少なくとも石破やその周辺はそう見ている。そういう状況に陥っているということだ。

野党第一党の本音も「石破辞めるな」

 石破を早く引きずり下ろしたい勢力は様々な手段を試みている。各地方の県連などを通じて石破を含む執行部の早期退陣を求めたほか、前回の記事で触れたように、総裁の解任や総裁選の前倒しの決議も行うことが出来る「両院議員総会」の開催を求める動きも活発だ。

 25日(金)には総会開催のための署名集めを行ってきた笹川博義農林水産副大臣が、必要とされる党所属議員の3分の1を「クリアした」と明らかにした。笹川らは28日に前倒しで開催された「両院議員懇談会」での執行部の対応を見極めた上で、総会開催を求めた(現在、森山幹事長らは8月上旬にも総会を開催する予定で調整を進めている)。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
永田象山(ながたしょうざん) 政治ジャーナリスト
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top