「石破おろし」と「石破やめるな」――日本政治の不可解な新時代

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執筆者:フォーサイト編集部 2025年7月27日
エリア: アジア
日本は何年もの間、他の多くの豊かな民主主義国の政治をひっくり返したポピュリズムや二極化から逃れてきたように見えた。しかし、もはやそうではないことは明らかだ――英エコノミスト誌[2025年7月25日、東京・永田町の首相官邸前](C)AFP=時事

 自民党内では「石破おろし」、首相官邸前では「石破やめるな」。参院選後の首相が続投理由に挙げた日米関税交渉が合意に至り、進退問題がいよいよ騒がしくなってきました。

 総裁解任を提案できる両院議員総会が開催されるには「党所属国会議員の3分の1以上」による要請が必要ですが、すでにこの条件はクリアされたと伝えられます。旧安倍派、旧茂木派そして麻生派と、旧派閥が主導して進んだ署名集めは石破政権“非主流”の逆襲そのもの。そうした動きは外から見れば旧態回帰にほかならず、「石破やめるな」の後押し要因にもなっているはずです。

 ただ、注意したいのは、石破政権が続く限りおそらく自民党の分裂は深まり続け、政治の混乱それ自体を狙う向きには好都合であることです。自民党に“お灸を据え”て留飲を下げる気持ちよさを、いまはできるだけ引き伸ばしたい。「石破やめるな」の根底に、そんな無意識が潜んでいるのであればこれも危うい問題です。そして、自民党に本格的な挑戦を挑むにはまだ力が足りない野党にとって、これほど心地よい状況もないでしょう。

 先の参院選を国際社会はどう見たか。フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事5本、皆様もよろしければご一緒に。

Ishiba Shigeru's premiership is crumbling【Economist/7月21日付】

[The Intelligence]Land of the rising shun? Immigration and Japan's politics【Jason Palmer, Moeka Iida, ほか/Economist/7月21日付】

「LDP[自民党]は、70年にわたって日本の政治を支配してきており、今でさえ国会の両院で最大の勢力を維持している。しかし、参院選の結果は、長らく権力を握ってきたその力が弱まりつつあることを裏づけている。主たる脅威はもはや、既成の中道左派野党である立憲民主党(CDP)ではない。その代わりに有権者を惹きつけて[自民党から]引き離しているのは、政治分野の新興勢力たちだ」
「最も顕著な躍進を遂げたのは、比較的新しい政党だった。国民民主党――ポピュリストの素質を持つ玉木雄一郎が率いる中道政党――は議席数を9から22へと2倍以上に増やした。これにより、CDPに次いで参議院で2番目に大きな野党となった。『日本人ファースト』をスローガンに掲げる極右の反移民政党、Do It Yourself党(参政党)も躍進した。議席数が2から15へと飛躍したのだ こうした新党は有権者を活気づけた。投票率は59%に上昇し、2012年以降で最高を記録した」

 日本の参院選をこのように総括するのは、英「エコノミスト」誌の「崩れつつある石破茂首班体制」(東京発7月21日付)。

カテゴリ: 政治
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