日本も後発医薬品(ジェネリック医薬品)を中心に中国依存度が高まっている (写真はイメージ)

 バイデン米政権の誕生後も米中の対立は一向に鎮静化する様子はない。米国が繰り出す輸出規制策に対抗し、中国も戦略物資の統制強化をちらつかせる。レアアースはその代表例だが、中国に急所を握られるリスクはこれだけではない。私たちの健康に欠かせない医薬品の分野でも、中国は急激に世界市場での支配力を強めている。米国だけでなく日本も、輸出規制という危機に脅かされているのだ。

かつての生産大国・インドも今や中国依存

   医薬品の有効成分が含まれる原薬の価格が急騰している――。今年7月下旬、インドの現地メディアがこんなニュースを配信した。

   有力英字紙、タイムズ・オブ・インディアによると、新型コロナの流行前と比べた価格の上昇率は6月時点の平均値で約50%。特に解熱鎮痛剤や抗生物質、糖尿病治療薬の原薬は2倍以上になったという。いずれも、調達先である中国からの供給停滞や輸送コストの上昇が主な原因だ。

   インドは世界の医薬品原液の生産大国だった。しかし、近年は中国への依存度を高め、一部の抗生物質はその割合が実に9割に達するものもあるという。医療費の上昇につながる医薬品原液の高騰は、新型コロナで疲弊したインド社会のさらなる重しとなっている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。