医薬品サプライチェーンに中国リスク:現実味を増す「日本から抗菌薬が姿を消す日」

執筆者:湯浅健司 2021年9月17日
タグ: 日本 中国 感染症
エリア: アジア
日本も後発医薬品(ジェネリック医薬品)を中心に中国依存度が高まっている (写真はイメージ)
世界の医薬品原液市場で中国の躍進が際立っている。そのシェアは約30%とトップを占め、米国の中国依存は実質50%超とも見られている。懸念されるのは米中対立の中、この医薬品原料が「戦略物資化」する事態だ。事実、日本でもすでに「中国リスク」での供給ストップが発生している。

 バイデン米政権の誕生後も米中の対立は一向に鎮静化する様子はない。米国が繰り出す輸出規制策に対抗し、中国も戦略物資の統制強化をちらつかせる。レアアースはその代表例だが、中国に急所を握られるリスクはこれだけではない。私たちの健康に欠かせない医薬品の分野でも、中国は急激に世界市場での支配力を強めている。米国だけでなく日本も、輸出規制という危機に脅かされているのだ。

かつての生産大国・インドも今や中国依存

   医薬品の有効成分が含まれる原薬の価格が急騰している――。今年7月下旬、インドの現地メディアがこんなニュースを配信した。

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執筆者プロフィール
湯浅健司(ゆあさけんじ) 日本経済研究センター首席研究員兼中国研究室長。1984年早稲田大学政治経済学部経済学科卒、日本経済新聞入社。北京支局、上海支局、東京本社国際本部アジア担当部長、東京本社産業部長、グローバル事業局次長などを歴任。中国のマクロ・ミクロ経済、アジア経済全般を専門とする。共著に『復興する中国』(文眞堂)、『米中激突 中国ビジネスの行方』(文眞堂)、『中国 創造大国への道 ビジネス最前線に迫る』(文眞堂)がある。
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