新総裁のもとで「脱派閥」の流れは加速するか(C)時事

 

今回の総裁選は「特別」ではない

 自民党総裁選挙が行われている。国会議員ではない党員・党友が全都道府県で投票権を持ち、かつ現職が出馬しない選挙としては、安倍晋三が総裁に復帰した2012年以来9年ぶりのこととなる。9年前の自民党は、12月の総選挙での政権獲得がほぼ確実になっていたとはいえ、民主党政権下の野党であった。そう考えると、与党としての自民党において今回のような総裁選挙が行われるのは、2006年以来15年ぶりである。

 十年一昔とはよく言ったもので、これほどの時間が経つと、過去の自民党総裁選挙がどのようなものであったかの記憶は曖昧になる。さらに、当選した総裁(首相)がどのような党運営や政権運営を行ったかについての共通理解も失われる。それはやむを得ないのだが、不正確な説明や解説が登場する原因にもなる。

 今回の総裁選挙で派閥の影響力が低下したという見解は、その最たるものであろう。派閥の存在感が乏しい総裁選挙であることは確かだが、それは今回始まったことではない。むしろ、菅義偉が選出された前回(2020年)が近年では異例であり、総裁選挙に限らず、自民党の運営における派閥の存在感は全体として著しい低落を続けているのである。派閥中心の党運営、すなわち派閥政治はもはや完全に過去のものとなった。

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