波紋が広がるサーカシビリ元大統領の逮捕(C)AFP=時事

 

 ジョージア地方選挙の投票を翌日に控えた10月1日、黒海沿岸都市バトゥーミの海岸線をバックに、マスクを顎まで下げてスマートフォンに向かって訴えるサーカシビリの映像がソーシャルメディアに流れた。

「みんな野党に投票してくれ、そして自由の広場を埋め尽くそう。10万人集まれば、我々は負けることはない……。私は人生と自由を失うリスクを冒して、戻ってきた」

 政府は「ジョージアにいることはありえない。映像は偽物だ」といったん発表したが、その日の夜、サーカシビリを逮捕したと発表、首都トビリシで手錠をはめられ警官に連行される同氏の映像が配信された。

 亡命先であるウクライナからの情報によれば、サーカシビリは同国で出国手続きもせずにジョージアに密航したようだ。

 なぜこれほどのリスクを冒してまでサーカシビリは帰国したのか。それは今回の地方選が「政府・与党の信任投票」の意味を帯びていたからだ。

 後述する2019年の大規模反政府デモ以降、与野党の対立が続く中で、EU(欧州連合)の仲介による与野党合意が成立。その中には、今回の地方選挙で与党の得票率が43%に届かなかった場合は総選挙を前倒しで実施することが含まれていた。コロナ禍と景気低迷もあり、政府・与党への不満が高まるなかで、野党勢力は攻勢を強めていたのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。