東京オリンピックから振り返る世界と日本(上)

執筆者:北岡伸一2021年10月22日
7月23日、東京五輪開会式で入場した各国選手団 (C)時事

 私はスポーツが好きだ。自分でできるスポーツは限られているし、それもさほどうまくはない。しかし見るのは何でも好きで、今回のオリンピックにも大いに興奮し、楽しんだ。

 それゆえ、私は競技そのものに興味があって、開会式や閉会式にはあまり興味がない。しかし今回は国際協力機構(JICA)の理事長という職責上、興味を持って見ていた。

開会式から垣間見えた国際政治

 一番関心を持っていたのは、南スーダンである。

 前にも書いたことだが、南スーダンは長い独立運動の末、2011年にスーダンから独立したが、国内で部族対立が絶えなかった。そこで、国民の一体感を強めるために、全国スポーツ大会をやったらどうだろうと考えて、JICAが協力して、2016年1月、日本の国民体育大会のようなものを、「National Unity Day(NUD)」という名前で実施した

南スーダンの第6回National Unity Day(NUD)(2021年6月=JICA提供)

 これは大成功で、対立していた部族と一緒に競技できる日が来るとは思わなかった、と感激して泣いている人もいたらしい。その興奮から、急遽、その年に開かれるリオデジャネイロオリンピックに行きたいと言う声が上がり、JICAが費用を支出して、選手とコーチ、数人に行ってもらった。以後、この NUDは毎年開かれており、種目も増えている。私も2019年に1度、開会式に出席した。

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