三菱重工は早ければ来年半ばにも資産現金化が現実になる(写真は新日鉄住金に対する賠償命令の判決=2018年10月30日) ©︎時事

危機は9年前から

 韓国の徴用工をめぐる訴訟で、大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じる判決を確定させてから10月30日で3年となった。被告の日本企業が所有する資産を現金化する手続きは最終段階にまで進んでいる。今年1月に文在寅大統領は記者会見で日本企業の資産の現金化は「望ましくない」と述べた。ただ、そうした「本音」を明かしてみせたものの、司法手続きに直接的に介入することはできず、現金化への流れは止まっていない。最も手続きが進んでいる三菱重工業の場合、地裁が2021年9月に資産(商標権2件と特許権2件)の売却命令を出した。翌月に三菱側は即時抗告をしたが、早ければ2022年半ばには棄却されて現金化が現実のものとなるという見通しが出ている。結局、文在寅政権は、原告たちと日本政府の双方が受け入れられる解決策を打ち出すことができないまま、3年が過ぎた。

 この危機は、しかし、3年前から始まったわけではない。発端は、2012年5月に大法院が初めて日本企業に賠償責任があるという司法判断を示したことだ。つまり、9年も前から、現在のような事態になる可能性が低くないことは予見できていた。この間、前の朴槿恵政権も含めて、韓国政府が何も手を打たなかったわけではないが、三権分立という原則を乗り越えられずにいる。

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