ソウルの植民地歴史博物館では今年の7月から11月にかけて元徴用工の証言映像も公開された ⓒ EPA=時事

判決確定から「3年の節目」が持つ重要な意味

 2018年に韓国大法院(最高裁)が「徴用」をめぐる訴訟で日本企業に賠償責任があるという判決を確定させてから10月30日で3年が経ったが、これは漠然とした節目というにとどまらず、具体的な意味も持っている。訴訟件数が膨らみ続けることに歯止めがかかったのだ。というのは、18年12月、光州高裁が「徴用」に関して新たな提訴ができるのは大法院の確定判決から「原則6カ月、最長で3年」という判断を示したためだ。それ以降の提訴は「時効」によって認められないとしたわけだ。

 また、やや混乱をきたすかもしれないが、ソウル中央地裁は、今年、「時効」の起点を3年前ではなく、前回触れた2012年5月の大法院判断、つまり9年前になるという判断を示して2件の訴えを棄却している。

 このように、起点をどこに置くかで判断は分かれているものの、韓国の裁判所が「時効」という概念を明確にしたことで、当初懸念されたように「パンドラの箱」が開いたかの如く際限なく提訴が続くという事態は、ほぼなくなったと考えてよさそうだ。これによって、日韓両国とも問題のスコープ(範囲)は把握できるようになった。原告の支援団体によれば、現在、70件余りの訴訟が係争中で、原告は1000人超。これを多いとみるか少ないとみるかは意見が分かれそうだ。だが、いずれにせよ、スコープが見えたことで日韓両国は解決策を模索しやすくなったはずだ。

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