(C) 今年5月に出航したクイーン・エリザベス

 


英「インド太平洋傾斜」にとってエポックメイキングな2021年

 2021年3月16日に、英国は外交安全保障戦略文書「競争時代におけるグローバル・ブリテン:安全保障、防衛、開発および外交政策の統合レビュー」(以下、「統合レビュー」)を策定し、欧州連合(EU)離脱後の対外構想である「グローバル・ブリテン」を体系化した。そこで中軸とされたのが、英国が2010年代初頭から静かに進めてきた「インド太平洋傾斜(Indo-Pacific tilt)」政策であった。

 これは、地経学的重心がインド太平洋地域に移る中で、英国のこの地域における経済的機会の追求と安全保障面での役割拡大を目的とした政策であり、歴史的に見れば、1960年代末から70年代半ばにかけて実施された英国の「スエズ以東からの撤退」以来の「スエズ以東への回帰」と言える現象でもある。

 そして2021年は、3月の「統合レビュー」策定に加え、5月から新鋭空母クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth)を旗艦とする空母打撃群(CSG21)がインド太平洋地域に向けて派遣され、同盟諸国と各種共同訓練を実施するなど、英国の「インド太平洋傾斜」にとってエポックメイキングと言うべき年となった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。