敵基地攻撃能力は国際法上、合法か違法か

執筆者:田中佐代子2021年11月17日
日本のミサイル防衛をどう強化すべきか=写真はイージス艦「まや」(C)時事

 

「可能」だが「保有」していない敵基地攻撃能力

 日本がこれまで整備を進めてきた弾道ミサイル防衛システムにおいては、ミサイルが発射され、発射国の領域外に出た後の段階で迎撃することが想定されている。しかし、北朝鮮の弾道ミサイル技術・攻撃能力が向上していることなどから、日本の安全にとっての脅威が増しているという認識の下、いわゆる敵基地攻撃能力の保有の是非が近時盛んに論じられている

 敵基地攻撃能力は、厳密な定義が共有された用語ではないが、一般的に、敵の基地などのミサイル発射拠点・発射装置を攻撃する能力として理解されている。飛翔しているミサイルを迎撃するのではなく、敵基地に打撃を与えてミサイル発射を阻止することを狙いとしたものと捉えられる。

 敵基地攻撃能力に関する日本政府の見解については、1956年の鳩山一郎首相答弁(船田中防衛庁長官代読)に遡ることができる。そこでは、ミサイル攻撃に対する防御のために敵基地攻撃を行うことは、一定の条件を満たせば、法理上、自衛行為として可能であるとされ、その立場は今日まで維持されてきた。

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