みずほFG行政処分、実は「大甘」と言える理由

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執筆者:浪川攻2021年12月8日
「経営責任の明確化」が単なる“トップのすげ替え”で終わりはしないか ⓒ時事

 金融庁は悩み続けたにちがいない。システム障害を繰り返したみずほフィナンシャルグループ(FG)への行政処分である。結局、金融庁は11月26日、「経営責任の明確化」を迫り、坂井辰史・同社社長などを引責辞任に追い込んだが、そこには、金融庁の苦しい胸中が垣間見える。

 年間8度という前例を見ないシステム障害の発生から透けて見えたのは、取締役会の機能不全ぶりだった。金融庁は極めて厳しいトーンをもって「日本の決済システムに対する信頼性を損ねたと考えられる」と行政処分の文中で断罪した。

 銀行にとっての決済ビジネスは、たとえば、宅配業者の宅配事業と似ている。今回の出来事は、宅配業者がたびたび宅配不能の事態を引き起こしたのと等しい。さらに言えば、宅配という物の流れの裏には代金支払いというカネの流れがあり、それを担っているのが決済である。したがって、決済不能は、モノの流れの問題にも発展しかねない。

 決済システムはガラス細工のような繊細な構造物である。ちょっとしたひび割れが決済ネットワーク全体を揺るがしてしまう。つまり、決済業務の担い手はその役割の重大性から、つねにその資質が問われる。この部分で疑念を抱かれる事態を発生させたのがみずほFGにほかならない。

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