ガソリン価格の高騰には岸田政権も神経を尖らせる(11月25日、東京都江東区) ⓒ時事

消費国に恩を売ったOPECプラス

 コロナオン、コロナオフ。世界の金融・株式市場は新型コロナウイルスの波とともに、積極的にリスクを取りに走る局面と、リスク回避に動く局面との間を揺れ動いてきた。11月26日に世界保健機関(WHO)が、最も警戒を要する「懸念される変異株(Variant of Concern)」に指定したオミクロン株の登場は、いったんは投資家心理をコロナオフに傾かせた。

 原油相場の急落はその典型だろう。11月9日には1バレル85ドルに迫っていたWTI先物は、12月2日には65ドルをも下回った。11月23日にバイデン米政権の音頭取りで、日中印英韓などが石油備蓄の放出に踏み切った時点では、「焼け石に水」が専門家の合言葉だった。南アフリカが感染力の高い新たな変異株の存在を発表した途端に、挨拶代わりの原油見通しは冷水を浴びせられた。

 12月2日、オミクロン・ショックに見舞われるなか、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は、現行の原油増産を2022年1月も続けると決めた。バイデン政権主導の石油備蓄の放出は、原油高を抑えるための協調介入の性格を帯びている。原油価格を押し下げようとする消費国の振る舞いに面白くないOPECプラスは、12月の閣僚協議では増産を見送るとみられていた。

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