イエレン財務長官はSDRに対する米政権の姿勢を転換させた ⓒAFP=時事

 世界的パンデミックとカーボンニュートラルが、ヒトとモノ、そしてカネの動きを大きく変えた2021年、基軸通貨ドルを巡って歴史的な大転換が構想されようとしていることをご存知だろうか。

 それはビットコインに代表される暗号通貨や、Facebook社(現Meta)が構想し、主要国の懸念から取り下げられた「リブラ」も(現「ディエム」)、大きな起爆剤となって進行している。

 その一手は、今年8月、国際通貨基金(IMF)によって打たれた。主要通貨のバスケットである準備資産の特別引き出し権(SDR)を、米ドル換算で約6500億ドル新規配分したのだ。

 奇しくも50年前の8月は、「ニクソンショック」という戦後の国際通貨体制の大きな転換点であった。筆者は今回のSDR配分もドルを基軸通貨とする国際通貨体制の歴史的転換点への始まりになるポテンシャルを持っていると考えている。

SDRの原点はケインズの世界通貨「バンコール」

 まずは、SDRとは何かから説明をはじめていこう。

 SDRとはすなわち、加盟国の準備資産を補完するためにIMFが配分している国際準備資産である。ただし、公的当局間だけで取引され、ドルや円のような通貨と交換可能な「引出権」であり、いわゆる「通貨」とは異なる。

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